その昔、既婚の女性は歯を黒く染める「お歯黒」という習慣がありました。もちろん現代では消滅している習慣ですが、鳥の世界では口の中が真っ黒なお歯黒鳥「セッカ」がいるのです。
セッカとは漢字では「雪加」と書きます。スズメよりも更に小さな13㎝程の身体で、黄褐色の身体には黒い縦斑があります。雌雄同色で目立ちにくい色合いの鳥なのですが、繁殖期の雄にはなかなか面白い特長があり、その一つが口内が真っ黒になる現象です。これは婚姻色の一種ではないかと言われています。
セッカは一夫多妻制ですので、一羽の雄は同時に複数の雌と番になって繁殖します。イネ科の植物の葉と蜘蛛の糸を材料にして巣を作り、雌を呼び込むのです。雌はその巣に4~6個の卵を産み抱卵します。
2週間程で生まれた雛を育てるのは、もっぱら雌の仕事。雄は、複数の自分の巣を守るために単身で頑張らなくてはなりせん。ヒッヒッヒと囀りながら上昇し、下降する時はジャッジャッジャと鳴き声を変えて降りて来て、自らの縄張りを主張しています。
そして繁殖期を過ぎ秋風が吹くころになると、セッカは大人しくなり、草むらの中でひっそりと静かに暮らしているのです。
セッカの特性
スズメより小さいセッカ
写真提供:(公財)日本野鳥の会 松浦 洋二 様