日本では全国で広く繁殖する留鳥「キジバト(雉鳩)」。体色がキジに似ていることに由来し、別名「ヤマバト」ともいいます。山地の森林に生息し、かつて狩猟が盛んな頃は滅多に姿を見せませんでしたが、年々銃の扱いが厳しくなるにつれて人を恐れなくなり、近年は市街地でもよく見られます。
体長は33㎝前後。食性は雑食で、果実や種子をはじめ、昆虫類、ミミズなどを食べます。オスは、求婚や縄張宣言のため、「デェーデェーポッポー」とか「クークグッググー」など、壊れたラッパのような声で繰り返し鳴きます。
繁殖期は長く、3~11月に及びます。キジバトをはじめハト類のヒナは、親鳥の口の中に頭を入れ、親が分泌する「ピジョンミルク」という栄養分を食べます。ピジョンミルクは脂肪とタンパク質に富み、ほ乳類のミルクに似た成分ですが、オス親も分泌します。餌が不足しがちな時期でも繁殖できるのは、ピジョンミルクのおかげだと考えられています。
伝書バトの歴史
駅や公園などでよく見かけるハトは「ドバト(カワラバト)」といい、伝書バトが野生化したものといわれます。ハトは、遠方からでも迷わず自分の巣に帰ることができる能力と方向感覚を備えており、これにより古来より通信手段としての役割を果たしてきました。古代エジプトでは、伝書バトを利用して漁の成果を陸まで知らせたという記録が残されており、近年でも軍事機密を伝達する「軍用バト」や新聞の報道用、薬や血清を運ぶ医療用など、広く活躍しました。 通常、1回の飛行は200㎞程度ですが、なかには1000㎞以上飛行することもありました。伝書バトは、電話やメールがない時代は最も速い通信手段の一つだったのです。
地上を歩きながら、草の種子などをついばむ
写真提供:(財)日本野鳥の会 岩崎 和男 様