国内の野鳥のなかでも最小種のひとつである「ミソサザイ」は、沢沿いなどの湿った林が好きな鳥で、枝や地面をちょんちょんと移動しながら昆虫やクモを探してはついばみます。全身地味なこげ茶色で体長は 10㎝程度ですが、小さい割に声が大きく、 森の中に響き渡るような高音の澄んだ声で「チリリリリッ!」とさえずります。
ミソサザイは、ほぼ全国の亜高山帯に生息し、秋から春にかけて低地に移動して越冬します。オスは自分の縄張りを持ち、コケなどを利用して木の根元や崖のすき間に球形の巣を作ります。巣には出入口が2ヵ所設けられ、外敵から襲われると反対側の出口から脱出します。
ミソサザイは、日本では古くから知られており、古事記や日本書紀にも登場する由緒ある鳥ですが、西洋においても数々の民話の中に登場します。ある有名なスコットランド民話によると、ある日、鳥たちが集まり、一番高く飛べた鳥を自分たちの王とすることにしました。ワシは得意げに飛び立ち、誰よりも高く昇っていきました。ところが、いよいよ最高点に達しようとしたその時、ワシの首につかまっていたミソサザイが飛び上がり、見事ワシに勝利しました。ミソサザイは王として認められ、それ以来「鳥の王様」と呼ばれるようになったとのことです。
ミソサザイの特性
美声を響かせるミソサザイ
写真提供:(財)日本野鳥の会 岩崎 和男 様