豊かな自然に恵まれた奥多摩は、日本有数のワサビの産地として知られています。奥多摩では古くからワサビが栽培されており、江戸時代、徳川家の家紋であった「葵(あおい)」の形がわさび(山葵)の葉によく似ていたことから、ワサビを作るには幕府の許可が必要でしたが、奥多摩産のワサビは将軍家に献上されていたとの歴史もあります。
現在も静岡、長野に次ぐ日本三大ワサビ生産地の一つである奥多摩は、山々で育まれた涌き水にミネラル成分が豊富に含まれており、また、夏でも水温が20度以上にならないため、おいしい本ワサビが育つ環境が整っているのです。奥多摩ワサビは、粘り気があり香りが強いのが特徴であるといわれています。
一方、奥多摩町川井の山腹にある八雲神社には、めずらしい「楼門舞台」が残されています。この楼門の役割を兼ねた舞台は、川井の街並みを一望できる境内に、社殿と向かい合うように建っており、階段状に石垣を組んだ桟敷(観客席)も残されています。この舞台では江戸末期から昭和の初め頃まで演劇や歌舞伎が上演されていました。現在は使用されておらず、東京都指定有形民俗文化財として保存されています。ここから程近い、奥多摩町小丹波の熊野神社にも同様の楼門舞台が残されています。
ワサビ豆知識
ワサビは日本原産の野菜でハーブの一種。胃腸内の毒素を消散するなど殺菌力が強く、生魚を食べるのに欠かせない野菜です。
また、抗ガン作用の他、脳卒中や動脈硬化を防ぐ効果があり、根だけでなく葉や茎にも抗酸化成分があります。さらに、わさびに含まれる辛味成分(イソチオシアネート)が、 身体の代謝機能を向上させて免疫を活性化し、血液をサラサラにするため、血液中の総コレステロールを減少させ、血栓予防にも役立つとされています。
紅葉し始めた大丹波川
上流にはワサビ田が点在する
八雲神社の楼門舞台
舞台の戸は閉じられたまま
舞台側から社殿と桟敷を望む
また観客で埋まる日はくるのか
傾斜地を段々にし、少ない湧き水でも育つように工夫されたワサビ田(奥多摩町大丹波)