夜行性で昼間は森のなかでひっそりと暮らしている「フクロウ(梟)」。国内には10種生息しています。他の野鳥と異なり、両目が顔の正面にあるので獲物を立体的に捉えることができ、視野が狭いという欠点も、頭を180度後ろへ回転できることで補っています。よく見ると、どことなく人間の顔にも似ています。
フクロウはワシやタカと同じ猛禽(もうきん)類で、見かけによらずどう猛な面があります。鋭く尖った嘴と爪をもち、ネズミなどの小哺乳類をはじめ、鳥類も主食とするため、フクロウは鳥の世界では嫌われ者。小鳥はもちろんのこと、カラスやタカでさえフクロウを見つけると執拗に攻撃します。
フクロウの祖先は、恐竜をはじめとする動植物が最も繁栄、多様化した白亜紀(約1億年前)に、激しい生存競争のなか夜の世界へと移り住むようになったといわれています。その後、極めて特殊な進化をとげ、人間の10倍以上ともいわれる視力と、優れた聴力が備わりました。フクロウの耳は、顔の両側の上下左右違う位置にあります。これにより、音を立体的に聞き分け、音だけで獲物を仕留めることもできるのです。また、翼にはすぐれた消音機能が備わり、暗闇のなかを獲物たちに気づかれずに飛ぶことができます。この消音の仕組みは、新幹線の「パンタグラフ」にも応用されています。
フクロウは、ギリシャ神話で知性・学問・芸術・戦術などを司る女神アテナが従者として肩に乗せているところから、「森の賢者」と称されています。日本でも、頭が180度回るところから「頭の回転がよく知恵がある」、「見通しがきき商売が繁盛する」などと重宝され、また、「不苦労」や「福老」の字をあてて、福を呼ぶ不老長寿の象徴にもなっています。
フクロウの特性
夜を待つ「エゾフクロウ」
写真提供:(財)日本野鳥の会 岩崎 和男 様