1.開発趣旨
(1)開発の動機・目的
「バルブ内蔵クランプ型多機能継手(RABVICU)」は、活管の状態で取り出し・切り回しバ
ルブ設置が行えるとともに、耐震性・耐食性・高気密性を有し、セクター弁の機能を兼備えた多機能
継手です。この継手は設置に溶接を要さないため、天候に左右されず、安全、短時間で容易に施工可
能です。また、使用する工具もコンパクトなため、掘削面積が少なく土木工事のコストを削減できま
す。資金力や技術力の少ない地方ガス事業者は、導管の使用圧力に係らず安全・低コストで工事を行
なうため、自社で施工する必要があります。そこで、@非溶接で、Aガスを止めずに、B取り出し及
び、C切り回し、Dバルブ取り付け、E破損箇所の修理ができ、F代替バルブ(セクター弁)の機能
を備え、G少ない面積で施工でき、H在庫の問題を解決できる継手が必要でした。そこで、これらの
問題を全て解決するために「バルブ内蔵クランプ型多機能継手及び工具」を開発しました。
(2)開発の内容(資料参照)
@開発継手及び開発工具を写真−1・2に示します。
写真−2の上がストッパーで、下が管内切削清掃装
置です。
A継手の特徴
・クランプ型の二分割構造で、導管を切断せずにボル
トナットで取り付けられます。
・地盤変位吸収能力があります。
・当該導管1%歪相当の応力を加えた場合でも気密を
保持できます。
・継手が管軸方向に回転します(写真−3・4)。
・分割穿孔により穿孔機が小型(写真−3・4・5)。
・継手内部にスライドバルブ(写真−6)があるため、
分岐取り出し部にバルブの設置が不要(70A以上
は省令第49条でバルブ設置義務があります)。
・継手をセクターバルブとして使えます。
B内部腐食の著しい既設管のガス遮断に対応できる、
管内切削清掃装置を開発しました(写真−7・8)。
C内面に効率よく接触するオートマティックシールで、
1MPaの遮断が可能なディスクストッパーを開発
しました(写真−9・10)。
D自在錆び取り器を開発しました(写真−12)。
(3)新規性・独創性
@オートマティックシール(写真−11)により、気
密を保持しながら管軸方向に回転させることができ
ます(写真−3・4)。
Aディスクストッパーにより1MPaの遮断が可能で、
セクターバルブとしても使えます。
Bスライドバルブ内蔵なので、従来のシャッターによ
る工法に比べ気密性が高く、安全で作業時間も短縮
できます。
C非溶接で高い耐震・耐圧・高気密性があります。
D継手が回転する構造のため穿孔機が小型で、少ない
掘削面積で工事が可能。
E管内切削清掃装置・自在錆び取り器は今までありま
せんでした(写真−2中下)。
2.実 績
(1)合理化実績
@溶接作業及び溶接に伴う検査作業がありません。
A継手が回転するため、穿孔機の小型化が図れ、掘削
幅が約1.2mで工事可能です。
B継手が回転するため、他の埋設物との距離が0.13
m以上(溶接では不可能な距離)あれば工事可能で
す(写真−13)。
C活管の状態で需要量に左右されず昼間工事が可能の
ため、人件費が削減できます。
Dスライドバルブ内蔵により作業時間が短縮され(継
手取り付けから取り出し完了まで約40分)、取り
出しが省スペースで可能です。これらの特徴を生か
し工事を実施した結果、30〜40%のコストダウ
ンを実現しました。
(2)省エネルギー・環境改善実績
@工事に重機が不要なため、省エネであり、重機駆動
用エンジンの騒音及び排気ガスが出ません。
A非溶接のため、ヒュームによる人体への害がないと
同時に、ウェルダーの騒音及び排気ガスが出ません。
B工具類が小型なため、道路占用が少なく、道路使用
許可の取得が容易です。
C活管の状態で工事ができるため、需要量の少ない夜
間工事の必要がなく、住民からの騒音苦情が減少し
ます。
(3)保安改善実績
@非溶接のため、工事中の着火・火災の恐れがありません。
A非溶接のため、熱応力が発生しません(非裏波経年管取替え等の際、溶接時の熱応力歪で非裏波溶
接部が開口しガスが漏洩する場合がありますが 、機械接合なので熱応力が発生しません)。
B工具類が一人で運べる重さ、大きさのため、工事用重機の誤操作に起因する事故がありません。
C導管損傷修理から一般工事まで活用できる継手なため、災害時等の復旧及び保安規程に基づく教育
訓練が容易です。